JASCCは、多職種で連携し、科学する支持医療をめざします。

代表理事あいさつ

理事長からの挨拶とメッセージ
~学会創設期、1期2年を振り返り、課題と今後の展望を考える~

日本がんサポーティブケア学会 理事長 田村和夫

田村和夫

2015年に設立されました日本がんサポーティブケア学会(JASCC)は、ゼロからの出発ではありましたが、try and errorを繰り返しながら、みなさまのご理解と支援により、少しずつではありますが、成果が出てきております。早いもので2年が経過し、理事、委員会委員、部会員は2期目を迎えています。また、学会のホームページのリニューアルもあり、挨拶にかえまして、この2年間をともに振り返りながら、今後のことを考えたいと思います。

1. 学会運営

本学会は、他学会と異なり領域ごとに部会を設置し、各部会を中心に学会運営が行われています。当初、16部会で始まりましたが、漢方部会が新しく加わり17部会となり、さらに今まで取り上げられることの少なかったonco-cardiology, onco-nephrology, patient recorded outcome(PRO), integration of oncology and supportive/palliative care の4つのワーキンググループ(WG)が設置され活動を始めています。

また、部会活動が活発になるにつれ、エビデンスの創出、診療指針の作成が行われるようになり、その内容を評価する委員会が必要となり、ガイドライン委員会が新たに設置されました。さらに、学会の国際化にむけて、国際委員会が設置されました。現時点で本学会は7委員会、17部会、4WGで構成されています。

会員数

2016年第1回学術集会(相羽惠介会長、慈恵医科大学)開催時、340名でしたが、2017年第2回学術集会(佐伯俊昭会長、さいたま市)開催時で647名と増加しています。本学会は、専門医制度を持たない多職種がかかわる学会ですが、本学会の趣旨に賛同いただける方がそれなりにおられることを示唆しており、今後も会員数の増加が期待されます。

支持・緩和医療領域における臨床研究

2016年月より日本医療研究開発機構(AMED)は、革新的がん医療実用化事業で6つある領域のうち、領域5において始めて「科学的根拠に基づくがんの支持療法/緩和療法の開発に関する研究」として、支持・緩和医療に関する研究に対し公募を開始しました。本学会の部会が中心となり2つの班が、また部会員がかかわった班が2つ採択され、現在研究が進行中です。エビデンスの少ない領域で、また研究指針が確立していない領域であり、班長をはじめ班員が苦労しながらプロトコール作成・実施に努力しているところです。さらに、支持・緩和領域の研究ポリシーの策定にあたっては、2017年度の2次公募において全田貞幹会員のプロジェクトが採択されました。

シスプラチンを含む高度催吐性化学療法による化学療法誘発性悪心・嘔吐の予防に対する標準制吐療法+オランザピンの有効性と安全性を比較する二重盲検プラセボ対照第3相ランダム化比較試験 静岡県立静岡がんセンター 安部 正和
がん治療中のせん妄の発症予防を目指した多職種せん妄プログラムの開発 国立研究開発法人国立がん研究センター 小川 朝生
悪性腫瘍に伴う悪液質の標準治療の確立 京都府公立大学法人京都府立医科大学 髙山 浩一
外来がんリハビリテーションプログラムの開発に関する研究 学校法人慶應義塾慶應義塾大学 辻 哲也
支持/緩和治療領域研究の方法論確立に関する研究 国立研究開発法人国立がん研究センター 全田 貞幹

診療指針の発刊予定

JASCC支持医療ガイドシリーズ
  • 「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」2017年版
     (神経障害部会:平山泰生部会長、吉田陽一郎副部会長)
  • 「がん薬物療法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」
     (皮膚障害部会:山崎直也部会長、平川聡史副部会長)
JASCC支持医療ガイド翻訳シリーズ

悪液質、口内炎に関する総説あるいはガイダンスが翻訳・発刊予定

支持・緩和医療領域の基礎研究 ~precision medicine

支持・緩和医療領域における病態解明のための基礎研究は、がん治療と同様、新規の薬剤・医療機器の開発にとって重要です。例をあげますと、悪液質の病態解明からその治療薬が現在治験中であります。また、Opioidが奏効する例としない例の差や、副作用発現のメカニズムを分子レベルで解明していくことが、opioidの安全で有効な使い方につながります。支持・緩和医療領域もprecision medicineの時代にしていかなければなりません。それには基礎研究者の養成と研究費の本領域への投入が必要です。

2. 支持・緩和医療に関する用語についての整理
~「支持医療」の普及に向けて

国の第2期がん対策推進計画の中には「がんと診断されてからの緩和ケア」が重点施策として盛り込まれています。「緩和ケア」とは何を指すのでしょうか?あいまいな茫漠とした言葉で、医学用語としては問題があります。
当学会では、そのミッション・ビジョンを検討するにあたり、「基本理念」において「がん医療における包括的な支持療法(以下、支持療法)の教育、研究、臨床を通して。。。」と記載し、運営方針を7つをあげています。
サポーティブケア(SC)の適切な日本語訳がありません。一般に頻用される支持療法の「療法」の意は「治療の方法・しかた」を指し、そのカバーする範囲は狭く、SCは支持療法の対象となる症状や合併症の診断、鑑別診断、治療、評価、予後、それを実施する医療者や体制を含めた用語でなければなりません。当初、「包括的な支持療法」として理念を語りましたが、「緩和医療」に対峙するものとして、造語ですが「支持医療」をこれから発信、普及させていきたいと思います。
では緩和医療との関係はどうでしょうか?JASCCは、ESMOの考え方(Cherny NI et al. Ann Oncol 2003; 14: 1335-1337)に沿って、Supportive careは「がんのすべてのstage(trajectory、軌跡)における患者・家族をサポートする医療」であり、一方、Palliative care(PC)は「治癒が望めなくなった段階でのサポート」と定義しています。これらの間には当然オーバーラップがあり、スペクトラムの医療と考える。すなわち、その間に線を引くことは難しいと考えます。したがって、がん医療の両輪のうち、がんをターゲットとする「がん治療」とそれを支える支持療法、緩和治療は、「支持・緩和医療」というnamingで使用するのが相応しいと考えます。事実、欧米のがん関連学会や国際がんサポーティブケア学会(MASCC)の学術集会では、「supportive/palliative care」として取り扱われています。
では「緩和ケア」とは何でしょうか?日本語の「ケア」には、世話や配慮、気配り、手入れやメインテナンスといった、きわめて広い行為を指し、狭義では、看護、介護のことをいうことが多いようです。ただ、英語の「care」には、弱者、患者、障害者の世話をしてあげるといった上から目線のサービスというニュアンスがあるようで、米国の障害者福祉領域では、care を使わず、attendant service、看護では care giving、caringが使われるようです(https://ja.wikipedia.org/)。一方、medical careあるいはhealth careは、日本の「医療」にあたり、人の健康維持、回復、促進を目的とした諸活動全般を指しています。
第2期がん対策推進計画の「がんと診断されてからの緩和ケア」における緩和ケアは、「ケア」の広範な意味ではなく、医療機関、行政(介護・福祉)がかかわる「ケア」であると考えるのが妥当で、上記定義した「支持・緩和医療」がもっともふさわしいと考えています。

3. 国際化に向けての活動

JASCCの先駆者であるMASCCの学術集会中に日本からの参加者にために「JASCC seminar」を2016年から開催しています。また2017年のMASCC(Washington DC)の学術集会時に、MASCC-JASCC合同シンポジウムを始めて開催することができました。MASCCから連絡があり、2018年ViennaでのMASCC学術集会でも継続して開催することになっています。また、JASCCでも2017年さいたま市で開催される学術集会においてJASCC-MASCC合同シンポジウムを開催し、来年度以降も継続して実施予定です。さらに、2021年には、MASCCとJASCCを日本で合同学術集会を実施することで話しが進んでいます。期待ください。

4. 課題と展望

設立後この2年の活動を評価しますと合格ラインは超えていると思いますが、部会が中心の学会と言いながら、十分な活動をしていない部会が複数あります。その解決に向けて部会調整委員会を設置して部会の活性化、部会間の調整を始めているところです。まずすべての部会が、①当該領域における手引書あるいはガイドラインを出すこと、②エビデンスの無い領域に対して他の学会や関係者と協力しながら課題解決に向けて研究体制をとること、③国民、医療者に対して正確な情報を発信すること、④がん診療連携拠点病院を中心に、がん治療と支持・緩和医療の実践が、同時にがんと診断されたときからできる体制ができるように、支持・緩和医療に興味ある仲間を増やし、各施設でそれぞれのresourceに応じた体制がとれるように支援すること。
最後に、この学会の発起人である理事3人は、すでに高齢の域に入ってきています。世代交代が喫緊の課題です。

みなさんのご理解とご協力をお願いし、長文となってしまいましたが、理事長の会員ならびに関係各位へのメッセージとします。

2017年10月11日

PAGETOP
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.