会長挨拶
第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会
会長 佐藤 温
弘前大学大学院医学研究科腫瘍内科学講座 教授
日本がんサポーティブケア学会(JASCC)第4回学術集会を2019年9月6日〜9月7日にリンクステーションホール青森およびホテル青森(青森市)で開催します。東京(相羽惠介会長)で産声を上げた本学会は、第2回学術集会が埼玉(佐伯俊昭会長)、そして第3回学術集会が福岡(田村和夫会長)で開催されました。今度の開催は東北北端、青森での開催となります。この間に学会員数および、学術集会での発表演題数はずっと増え続けております。まるで本学会が日本全国を旅しながら大きく成長しているかのような印象です。
今回、都市部開催から離れ、地方開催となったことには意味があるかと思っております。これからやってくる近未来の将来、日本は少子高齢化から急激な人口減少という時代の激流に飲み込まれていきます。もちろん、医療の在り方にも影響が及んでくることは必至です。この流れを止めることはできません。けれども、変化する社会に合わせた医療構造の変革は人々に豊かさを継続して提供できるものだと信じております。実はこの日本の近未来社会への移行はすでに青森、秋田で始まっております。日本の将来の姿がこの地で現実化しているのです。だからこそ、この地で医療をもう一度みなさんと学び直すことに意義があると思っております。
科学の進歩は人々に大きな恩恵を与えてくれています。私が医師になった時代は抗がん剤の効果はかなり限定的でした。副作用に対する支持療法も未熟でした。シスプラチン投与直後から患者さんは両手に抱えた洗面器に吐き続けていました。若い医療職の方々は全く知らないことでしょう。今では日本中のどこにもそのような患者さんの姿をみることはありません。支持療法の進歩が、現代の急速なOncologyの進歩をもたらしています。科学の力、エビデンスに基づいた医療が重要です。それを「キュア」と言います。科学のちからで行う医療です。しかし、科学の力は医療の必要十分条件は満たしません。
医の起源は古代ギリシアのヒポクラテスの時代に遡ります。細菌やウィルスの存在も分からない時代、もちろん抗菌薬も全くない時代です。そんな科学が未熟な時代からずっと医療は途切れることなく脈々とあり続いています。医療というものは科学だけではないようです。ずっと変わらずあり続けている医療があります。今も科学の力が及ばない病気を抱いた人たちにも医療は行われています。それを「ケア」と言います。関係性のちからで行う医療です。その昔、不治の病であった「結核」や「らい病」と診断された患者らは、生命の危機を告知されたと同時に一般社会からも遠ざけられてしまいました。転地療養という隔離された場における暮らしの中では、自己の存在の意味を喪失する状況は現代よりももっとひどい状況かもしれません。しかし、そのような状況の中でも患者らは希望を持ち続けました。
第3回学術集会で田村会長がテーマに掲げたがん治療と支持緩和医療の統合は、全世界において当然の流れであり、そして必然の流れです。この流れを推し進めることが大切なことだと思っております。理由は、本来統合されていたものが、医療者/医学者側から分け離していったものだからです。医療を受ける側の患者からしてみれば一緒であることは極当然なことなのです。ごはんとおかずをイメージして下さい。ごはん(主食)が「ケア」で、おかず(副食)が「キュア」になります。どちらか一方の選択というのは酷なはなしです。一緒に食したいものです。安心して下さい、ごはんはかわりません。でもおかずはこれからも工夫は進み、きっともっとおいしい料理となって出てくることでしょう。
少子高齢化及び人口減により激変する地域社会と近未来日本のがん医療に求められるものは、もちろんキュアとケアの支えであり、そして医療が患者へ渡されていく中での人々の意識の変化であり、その結果のより豊かな成熟社会なのだと思います。今回、本学会は自然豊かで人の営みが豊かなこの青森の地で開催されます。この地だからこそ、みなさんと夢のある将来を語り合いたいです。多くの医療者の方々、そして今後医療を担っていく方々のご参加を心より歓迎、お待ちしております。
最後になりますが、本学術集会に向けてご尽力いただいた委員会・部会、プログラム委員、学会事務局(福岡)のみなさま、そしてともに夢を追いかけてくれている教室員、大学関係者、おおくの仲間たちに感謝いたします。正直なところ私たちの教室はまだまだ非力です。精一杯努力してまいりますので、どうか引き続きご支援の程よろしくお願いします。なお、プログラムや学術集会詳細につきましては順次サイトに挙げていくようにします。