会長あいさつ

第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会
会長 相羽惠介
(東京慈恵会医科大学内科学講座腫瘍・血液内科)

「副作用を制する者はがん治療を制する」

写真 2015年3月、一般社団法人として日本がんサポーティブケア学会(The Japanese Association of Supportive Care in Cancer、JASCC)を設立しました。ここでは、設立の経緯と当学会のミッションについて述べたいと思います。

  がんサポーティブケアと聞くと、さしあたってはがん薬物療法による副作用管理が想起されます。昨今では多くの癌腫で標準治療が確立され、極論するとマニュアルと医師免許証さえあれば誰でもがん薬物療法を行うことは可能です。しかし、多大なる副作用がたちどころに発現するのは自明のことであります。いわば憎き「がん」に対して「がん薬物療法」により喧嘩を売るわけですから、そこから派生する種々の事象、すなわち有害事象(多くは副作用)に対しては、がん薬物療法を行った者がすべて責任をとらねばなりません。その覚悟と自信のないものは無闇にがん薬物療法を行うべきではありません。覚悟と自信がなければ投与量を減じたり、投与期間を減じることになり、その「がん薬物療法」の所期の効果は期待できません。一方、十分なる知識と経験、知恵は万全の副作用管理を可能とします。すなわち反語的ではありますが、主題のごとく、副作用を制する者は、まさしくがん治療を制することになります。このように「がん薬物療法」における「治療効果」とその「副作用」は表裏をなすものでありますが、この相反する2大要素がこうした概念に基づいて真に話し合われる機会はこれまで乏しかったと思います。今次集会では、上記を意識した「がんサポーティブケア」を広く論議して頂きます。

  こうした議論の基盤にあるべきものとして、副題として掲げました「学と術と道」があります。学問、技術、医道の3要素は恩師の慈恵医大顧問、旧第三内科教授の故・阿部正和先生が指摘された医師として欠くべからざるものであり、勝れて私たちの到達域、標点を示されました。そこには「医はいたわりの心から始まる」とする思想があります。 「がんサポーティブケア」は、勿論副作用管理ばかりではありません。原病や治療の合併症、後遺症、サイコオンコロジー、リハビリ、がんサバイバー・就労関連、国民や医療職の教育等々多岐に亘ります。今次集会では、多種職、多方面、多領域からの活発なる討議と思索により、「がんサポーティブケア」の実があがり、がん患者さんへの福音となることを心から願っております。

  皆さまのご協力とご支援により、第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会が充実した盛会となりますようよろしくお願い申し上げます。

2016年4月