セルフケア
患者に口腔ケアプログラムを提供し、セルフケアを徹底することにより、口腔粘膜炎の発症率が減少したとの報告があります。
医科と歯科との連携ができない、歯科が常勤でない場合には、セルフケアの徹底が解決策のひとつとなります。
セルフケア指導のポイントについてみていきましょう。
口腔内の清潔保持
注意点
- ブラッシングが口腔ケアの柱であり、基本は歯ブラシを用いたブラッシングです
- ブラッシングの回数:1日2回(朝食後、就寝前)~3回(朝食後、昼食後、就寝前) ※回数は治療施設の状況に合わせて決めてよい
- 電動歯ブラシは、治療中は口腔粘膜がデリケートな状態となるため使用を控えます
歯ブラシの選択
刷毛は軟らかいナイロン製で、ヘッドが小さいものを選ぶ。
- 適しているもの
- 適さないもの
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磨き方
基本は細かい横磨き:歯を1~2本磨くつもりで小刻みに「シャカ、シャカ」と音がでる感じで動かします。
歯磨剤(歯磨き粉)の選択
歯磨剤は必ずしも必要ではないが、使用したい場合は下記に留意して選択します。
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- 低刺激
- 粘膜に刺激を与える発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を含まないもの。歯磨剤がしみたり痛みの原因になるようであれば、歯磨剤を使用せずに水だけで磨くよう指導する。
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- う蝕予防
- う蝕予防:軽度(1000-1500ppm)のフッ化物配合のものを選択する。
口腔内保湿
注意点
- 口が乾燥すると、口の粘膜に傷ができやすくなり、口腔粘膜炎の原因となります。口腔粘膜炎の発症前から癌治療後まで保湿を継続して行いましょう
- 処方された含嗽剤や市販の口腔保湿剤を用いて保湿します
- 口腔内保湿を継続すると、口腔粘膜炎の症状も軽減します。入眠前に用いることで、保湿効果が保たれ中途覚醒の防止に役立ちます
市販の口腔保湿剤使用法
- スプレー型
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- 携帯性に優れ、手軽にいつでも保湿でき、指を使わずに直接塗布できるため衛生的です
- 口内に適量をスプレーし、まんべんなく行き渡らせた後、吐き出します
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- ジェル型
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- 口腔内に比較的長時間とどまります
- 適量を手指もしくはスポンジにとって舌表面にのせ、舌を使って口腔内全体に薄くいき渡らせた後、吐き出します
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- 洗口型
- 保湿洗口液を口に含み、30秒程度のブクブクうがいをして吐き出します。
疼痛コントロール
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口腔粘膜炎のグレードや痛みの強さに応じて、局所疼痛コントロールと、鎮痛薬による疼痛コントロールとを組み合わせる
口腔粘膜炎のグレード
(CTCAE3.0)対処
(参考:頭頸部がん化学放射線療法をサポートする口腔ケアと嚥下リハビリテーション)1 含嗽*(1日6~8回)+粘膜保護剤 *含嗽は、粘膜炎ができる前から(治療開始と同時に)始めるように指導する 2 含嗽(局所麻酔剤入り;毎食の直前)+鎮痛薬+粘膜保護剤 3又は4 含嗽(局所麻酔剤入り;毎食の直前)+鎮痛薬+オピオイド - 食事の刺激による疼痛緩和での鎮痛剤は、毎食約30分前に服用させる
- 重度の粘膜炎で疼痛が強いときには生理食塩水※で、30秒程度ゆっくりとぶくぶくうがいをさせる ※生理食塩液含嗽⇒水500ml+食塩4.5ℊ(1日で使い切り)
処方例
口腔粘膜炎に対処する含嗽液、軟膏のうち、代表的な処方例を下記に提示します。院内調剤として推奨するものではありません。処方にあたっては、薬剤師などからの適切な説明や添付文書に従って使用するとともに、患者さんの状態等を総合的に判断の上、適切な治療法をご選択ください。
局所麻酔入り含嗽液:
アズレン/リドカイン/グリセリン
処方 |
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適応 | 化学療法による口腔粘膜炎、放射線性口腔粘膜炎 |
作成方法
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空きのペットボトル(500ml)にA・B・Cを入れる。 A : アズノール®うがい液 25滴 B : キシロカイン®液「4%」 10mL C : グリセリン 60mL
使用のポイント
- コップにうがい液を移し、口に含んで30秒程度ブクブクうがいした後、吐き出す
- 1日5~8回(起床時・毎食前後・就寝前など)、日中は2時間ごとを目安にうがいをする
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ガラガラうがい
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痛みが強く、食事や歯磨きができない場合…
注意事項
- 症状がある時は、アルコールを含む洗口液や、ポビドンヨードうがい薬の使用は避けましょう
- 痛みがある時も、なるべく歯磨きを実施し、お口の中を清潔に保ち、口腔粘膜炎悪化予防を心がけましょう
局所麻酔入り軟膏:
アズレン/リドカイン
処方 |
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適応 | 口唇部・頬粘膜部の放射線療法・化学療法時の粘膜炎 |
使用のポイント
- 口唇の粘膜炎に直接塗布する。痛みがある時は、いつでも使用可
- 粘膜炎が唇に限局している場合、局所的に使用する。持続時間は10~15分程度