SELF CARE
SELF CARE

セルフケア

患者に口腔ケアプログラムを提供し、セルフケアを徹底することにより、口腔粘膜炎の発症率が減少したとの報告があります。

医科と歯科との連携ができない、歯科が常勤でない場合には、セルフケアの徹底が解決策のひとつとなります。

セルフケア指導のポイントについてみていきましょう。

KEEP CLEANLINESS

口腔内の清潔保持​

注意点

  • ブラッシングが口腔ケアの柱であり、基本は歯ブラシを用いたブラッシングです
  • ブラッシングの回数:1日2回(朝食後、就寝前)~3回(朝食後、昼食後、就寝前) ※回数は治療施設の状況に合わせて決めてよい
  • 電動歯ブラシは、治療中は口腔粘膜がデリケートな状態となるため使用を控えます

歯ブラシの選択

刷毛は軟らかいナイロン製で、ヘッドが小さいものを選ぶ。

適しているもの
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刷毛面:直線型
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把柄部:
ストレートのものが操作しやすい
適さないもの
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    豚などの自然毛
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    刷毛面:凸凹型
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    毛先:極細毛
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    大きすぎるヘッド

磨き方

基本は細かい横磨き:歯を1~2本磨くつもりで小刻みに「シャカ、シャカ」と音がでる感じで動かします。

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    1持ち方
    歯ブラシをペングリップで持つ。
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    2歯の外側
    歯面に対してブラシを直角に当てる。
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    3歯と歯肉の境目
    歯面に45°の角度で毛先を歯と歯肉の境目に当て、横にずらしながら磨く。
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    4内側
    歯の咬頭にブラシの中心を当て、軽く押し付けて、毛先が少し開く感じで磨く。
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    5奥歯の内側
    一番奥の歯まで毛先が届くように意識しながら振動させる。

歯磨剤(歯磨き粉)の選択

歯磨剤は必ずしも必要ではないが、使用したい場合は下記に留意して選択します。

  • 低刺激
    粘膜に刺激を与える発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を含まないもの。歯磨剤がしみたり痛みの原因になるようであれば、歯磨剤を使用せずに水だけで磨くよう指導する。
  • う蝕予防
    う蝕予防:軽度(1000-1500ppm)のフッ化物配合のものを選択する。
MOISTURIZE

口腔内保湿

注意点

  • 口が乾燥すると、口の粘膜に傷ができやすくなり、口腔粘膜炎の原因となります。口腔粘膜炎の発症前から癌治療後まで保湿を継続して行いましょう
  • 処方された含嗽剤や市販の口腔保湿剤を用いて保湿します
  • 口腔内保湿を継続すると、口腔粘膜炎の症状も軽減します。入眠前に用いることで、保湿効果が保たれ中途覚醒の防止に役立ちます

市販の口腔保湿剤​使用法

スプレー型
  • 携帯性に優れ、手軽にいつでも保湿でき、指を使わずに直接塗布できるため衛生的です
  • 口内に適量をスプレーし、まんべんなく行き渡らせた後、吐き出します
  • 写真
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    頬や口蓋
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    口唇や口唇の内側
  • ジェル型
    • 口腔内に比較的長時間とどまります
    • 適量を手指もしくはスポンジにとって舌表面にのせ、舌を使って口腔内全体に薄くいき渡らせた後、吐き出します
  • 洗口型
    保湿洗口液を口に含み、30秒程度のブクブクうがいをして吐き出します。
PAIN CONTROL

疼痛コントロール

  • 口腔粘膜炎のグレードや痛みの強さに応じて、局所疼痛コントロールと、鎮痛薬による疼痛コントロールとを組み合わせる
    口腔粘膜炎のグレード
    (CTCAE3.0)
    対処
    (参考:頭頸部がん化学放射線療法をサポートする口腔ケアと嚥下リハビリテーション)
    1 含嗽*(1日6~8回)+粘膜保護剤 *含嗽は、粘膜炎ができる前から(治療開始と同時に)始めるように指導する
    2 含嗽(局所麻酔剤入り;毎食の直前)+鎮痛薬+粘膜保護剤
    3又は4 含嗽(局所麻酔剤入り;毎食の直前)+鎮痛薬+オピオイド
  • 食事の刺激による疼痛緩和での鎮痛剤は、毎食約30分前に服用させる
  • 重度の粘膜炎で疼痛が強いときには生理食塩水で、30秒程度ゆっくりとぶくぶくうがいをさせる ※生理食塩液含嗽⇒水500ml+食塩4.5ℊ(1日で使い切り)  

処方例

口腔粘膜炎に対処する含嗽液、軟膏のうち、代表的な処方例を下記に提示します。院内調剤として推奨するものではありません。処方にあたっては、薬剤師などからの適切な説明や添付文書に従って使用するとともに、患者さんの状態等を総合的に判断の上、適切な治療法をご選択ください。

局所麻酔入り含嗽液:
アズレン/リドカイン/グリセリン

処方
  • アズノール®うがい液4%(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物) 25滴
  • キシロカイン®液「4%」(リドカイン塩酸塩) 10mL
  • グリセリン 60mL
  • 水道水(精製水) 500mL
適応 化学療法による口腔粘膜炎、放射線性口腔粘膜炎
作成方法
  • イラスト
    空きのペットボトル(500ml)にA・B・Cを入れる。
    A : アズノール®うがい液 25滴
    B : キシロカイン®液「4%」 10mL
    C : グリセリン 60mL
  • イラスト
    水道水をペットボトルいっぱい(赤線部分まで)に入れてよく振る。
  • イラスト
    完成。
使用のポイント
  • コップにうがい液を移し、口に含んで30秒程度ブクブクうがいした後、吐き出す
  • 1日5~8回(起床時・毎食前後・就寝前など)、日中は2時間ごとを目安にうがいをする
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    コップ半分程度、うがい液を移して口に含む。
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    2〜3回にわけ、1回30秒程度口腔内全体に行き渡るように、左右にゆっくりとブクブクうがいをする。
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    うがいが終わったら吐き出す。痛みが強く口を動かせない場合は、うがい液を口に含んで停滞させるだけでも可。
  • ガラガラうがい

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    麻酔薬の作用により、誤嚥の恐れがあるため避けてください。
  • 痛みが強く、食事や歯磨きができない場合…

    イラスト
    うがい薬使用後、痛みが緩和されているうちに食事・歯磨きを行いましょう。
注意事項
  • 症状がある時は、アルコールを含む洗口液や、ポビドンヨードうがい薬の使用は避けましょう
  • 痛みがある時も、なるべく歯磨きを実施し、お口の中を清潔に保ち、口腔粘膜炎悪化予防を心がけましょう

局所麻酔入り軟膏:
アズレン/リドカイン

処方
  • アズノール®軟膏0.033%(ジメチルイソプロピルアズレン)15g
  • キシロカイン®ゼリー2%(リドカイン塩酸塩)3mL
適応 口唇部・頬粘膜部の放射線療法・化学療法時の粘膜炎
使用のポイント
  • 口唇の粘膜炎に直接塗布する。痛みがある時は、いつでも使用可
  • 粘膜炎が唇に限局している場合、局所的に使用する。持続時間は10~15分程度
  • 写真
    薬剤は混合されて処方。
    直接指を入れないよう注意。
  • 写真
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    清潔な綿棒で必要分をすくい取る。
    もしくは、清潔な木べら、スプーン等で別容器に使用分を移す。
  • 写真
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    • 口の角に軟膏を乗せるようにたっぷりと塗る。大きな口ではなく半開きの状態で塗布する
    • 清潔な指で唇を軽くめくり、唇の裏側も含めて塗布する
    • 強くこすらず、唇の上にトントンと乗せるように塗布する
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    唇を保護するように、厚みをつけて塗布すると効果的。乾きや痛みが強いときは、繰り返し塗布しましょう。
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大きく開け過ぎると、口角が割れ、疼痛や出血を生じるため注意が必要。

参考資料:
Larson P. et al. The PRO-SELF Mouth Aware program: an effective approach for reducing chemotherapy-induced mucostitis. Cancer Nurs 1998: 21(4);263-8.
浅井昌大ほか編. 頭頸部がん化学放射線療法をサポートする口腔ケアと嚥下リハビリテーション. オーラルケア. 2009.
全国共通がん医科歯科連携講習会テキスト 第一版:平成24 年度厚生労働省・国立がん研究センター委託事業:国立がん研究センターがん対策情報センター編:2013
田原信ほか編. 臨床頭頸部癌学 系統的に頭頸部癌を学ぶために. 南江堂. 2016.
荒川浩久ほか編. 歯科衛生士テキスト 口腔衛生学 第4版. 学建書院. 2018.
資料提供:
国立がん研究センター東病院歯科